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2022.12.02
転ばぬ先の任意後見
先日、任意後見制度について、あきる野市の社会福祉協議会主催のセミナーにてお話ししてきました。
任意後見制度というものは、認知症等により判断能力が低下した人の代わりに、後見人が財産管理や法律行為を行い、本人を支える制度の一つです。
既に判断能力が低下してしまった人のための制度が「法定」後見制度です。他方、判断能力があるうちに、備えとして準備しておくのが「任意」後見制度です。
2つの後見制度は、いずれも、選任された「後見人」に対し、本人を代理する権限が与えられます。
大きな違いは、「法定」後見制度の場合、後見人を選ぶのは裁判所であるところ、「任意」後見制度の場合、本人が後見人を選べる、という点です。「法定」後見の場合、裁判所の職権により、何らしがらみのない(悪く言えば事情を知らない)第三者が後見人になることがあり得るのです。
例えば、創業者であり会社株式の大半を保有している社長が認知症により判断能力が低下した、というようなケースがあったとします。このケースにおいて「法定」後見制度を利用して、全くの第三者である者が後見人として選任された場合、社長の保有してきた株式について、株主権を行使するのは当該後見人となります。当該後見人はこれまでの事情を知りませんから、場合によっては、後継者の取締役選任などに支障が生じることがあり得ます。
この点、任意後見制度の場合は、元気なうちに本人が備える制度ですから、本人は自由に後見人となる人物を選ぶことができます。事情をよく知った人物に後見業務を任せる事ができるので安心です。
会社の株式等守るべき資産があり、かつ、自身の判断能力が低下した後も自分の意向に沿った管理をして欲しいという希望がある場合には、転ばぬ先の杖として、任意後見は有力な手段となります。