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2025.10.04
『退職代行』から通知が来たら?
従業員本人からではなく、ある日突然、弁護士や見知らぬ業者から退職の連絡が届く。「退職代行」の利用は、今や企業規模を問わず広がる現象となりました。
「辞めたいと言い出せない」、その原因は会社にあるのか本人にあるのか。背景には、本人に問題がある場合もあるでしょう。また、「辞めたいと言い出せない」職場環境や、上司との関係悪化、ハラスメントといった、従業員が直接対話を諦めざるを得ない深刻な問題が隠れているケースもあるでしょう。
ともあれ、通知を受け取った際に会社がまず確認すべきは、その通知元が誰か、という点です。
弁護士資格を持たない民間業者が、報酬目的で退職日の調整や未払い賃金の請求といった「交渉」を行うことは、弁護士法で禁じられた「非弁行為」にあたります。この問題は弁護士会も重く見ており、東京弁護士会は令和6年11月に「退職代行サービスと弁護士法違反」というタイトルで見解を発表し、警鐘を鳴らしています。
相手が弁護士や労働組合であれば、正当な交渉権者として誠実に対応するしかないでしょう。
他方、相手が民間業者の場合、その業者は「交渉」ができませんので、会社の対応としては、交渉事には一切応じる必要はありません。退職届の郵送や貸与物(PC、社員証など)の返却方法といった、必要な事務手続きについてのみ、代行業者を通じて本人に伝えるのがよいと思います(なお、本人に直接連絡を取ろうとすることは、違法ではないものの、問題解決になるとは余り思えないのでお勧めはしません)。
退職代行を利用して元従業員から退職の連絡を受けた会社の代表から相談された際、「ショックだった」というお話を伺ったことがあります。どうして直接言ってくれなかったのか、と。
そのお気持ち、本当に察するに余りありますが、感情的にはならず、淡々とした対応を心掛ける、それが、無用なトラブルを避けるポイントかと思います。